30km/h

Menu / Hatena 

 


スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

猫を飼う女
老いた猫を飼っている。今年で22歳になる。
猫の寿命というのがだいたい15年くらい、17年生きれば長生きだというので22歳というと相当な年寄りだ。
実際体毛は艶がなく、ぼさぼさで、うすく濁った目はよく見えていないようだし、耳も遠い。そのせいかどうかはわからないけれど身体がだんだん傾いてきている。
歩いたと思ったらじっと立ち止まって動かなくなり(フリーズ)、しばらくするとまたゆっくりと歩き出す(再起動)。

猫特有の、からだのしなやかさはとうに失われていて、関節の強張った足でよたよたと歩く。海イグアナに似ている…とわたしは思う。
それでも毎日しっかりと食べてしっかりと出し、たくさん水を飲んで大きな声で鳴いている。このままあと10年くらい生きればいいのに、とわたしも家族もけっこう本気で考えている。

わたしがはじめてこの猫と会ったときから猫はおじいちゃんだった。
この10年ほどは家から出していないけれど、それより前は自由に外に出ていたんだよ、と猫の飼い主が言った。
「毎日外で遊んでたんだけど、ある日、白いメス猫を連れて帰ってきたんだ。それまでにも友達を連れてくることはよくあったんだけれど、白猫は帰ろうとしなかった。首輪をしていたから飼い主が心配しているだろうと思って張り紙を出したりしたんだけど連絡はなくて、白猫はそのままうちに居ついたんだ。うちに来たときにはもう妊娠してたみたいでね」
白猫は新しい家で二回妊娠して(避妊手術を受けさせるタイミングがわからなかったそうだ)父親と同じ柄の子猫と自分と同じ柄の子猫を産んだ。

そのまま白猫は十数年その家で飼われ、おばあさんらしくなる前に病気で死んだ。
今、キッチンで爪を研いでいるのが白猫の子で、色もかたちも顔も母猫によく似ている。


わたしがはじめて会ったときから猫は「年寄り」だったのだけれどこの2年ほどでさらに年をとった。病気もなく元気ではあってもいろんな機能が衰えていくのがわかる。
そんなふうなのでさすがに心配も多いのだけれど、それはさて置き、年寄りの猫には年寄りの猫特有のかわいさというものがあって、これは「猫かわいい」「毛の生えた小動物かわいい」というのとはまた別の種類のかわいさのように思う。わたしは子を産んだことがないけれど、自分の赤ちゃんがかわいくてたまらない、という感情に近いんじゃないかなと思う。
わたしはそこまでではないけれど、子猫のときに拾って育て、20年以上いっしょにいる、猫の飼い主は、毎日まいにち「たまらなく」なっては唸りながら抱き上げて、撫でたり揉んだり匂いをかいだり写真を撮ったり見つめたり頬ずりしたりしている。おじいちゃんはうんこがものすごく臭い。
スポンサーサイト
<< NEW | TOP | OLD>>
Menu