30km/h

Menu / Hatena 

 


スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

産む女
子を産みました。

そのときわたしは性交の最中で、天井から吊り下げられていました。裸のまま後手に縛られ、足は地面から浮いている格好でした。それまでこんなやり方を試したことはなく、縛られたり、吊られたり、ということに興味を持っていたわけでもありません。相手の男がやってみたいといい、ならば別に付き合ってもいい、というくらいの気持ちでした。

しばらく吊られていると下腹部に違和感を覚えました。おおきなうねりが走るような。なんだろうと思っていると宙に浮いた股間からなにかがドサドサと落ちました。
胎の奥からなにかが降りてきて膣を通り抜ける感触はほんの10秒ほどだった気がします。無理やり押し広げられる感覚も、痛みも、快感もありませんでした。そこを通るには少し大きすぎるなにかが、しかしスムーズに、ズルズルヌルヌルと降りていきました。

床に落ちたなにかは粘膜と粘液にまみれ赤く濡れていました。
なにかはパケツいっぱいほどの量がありましたが、それを出したわたしの体はとくに変わった感覚がなく、軽くなったというかんじすらありませんでした。あのようなものがわたしの体のどこにはいっていたのか。

すぐそばで見ていた男は心配そうにしていましたがなぜかそれほど驚いた様子はありませんでした。「なんなのこれ?だいじょうぶ?」といいながら縄をゆるめ、わたしを下ろしてくれました。
「わたしにもわからない」
そういいながらなにかを見つめていたわたしは、なにかの一部が人間のかたちをしていることに気付きました。
恐ろしい、と思いました。

わたしはそのとき妊娠していませんでした。いないはずでした。そのことは男も知っていて、だからわたしたちは今起きたことが出産かもしれないということに思い至りませんでした。
なにかのかたまりのなかに人間のようなかたちのものがあることに気付いたのはわたしだけでした。男には黙っておこう、と思いました。なぜだかはわかりません。

人間の形をしたものはかたまり(胎盤というものだろうかと思いましたが胎盤がどういうものなのかはよく知りません)から外を向くように横たわっていました。まずはそれが生きているかどうか確かめようと思いました。
みているとなぜか大きさの感覚が狂って、それは5センチにも20センチにも見えました。

恐ろしさが少し薄れてきたので、近づいてよく見ようと首を伸ばした瞬間、それがむくむくと動きました。
赤い肉が、モリ、モリ、と膨らむと表面に鼠色の毛が生えてきたのです。ゆっくりと大きくなりながら全身に毛が生えていきます。
細くやわらかそうな毛に包まれたそれはうさぎの形になっていました。

「うさぎが生まれた。うさぎを産んじゃった」
両の手におさまる大きさの、ふわりとしたかたまりを指して男に見せました。
「うさぎ?」男はひどく混乱してわたしの体を心配しはじめました。うさぎを産んでだいじょうぶなのか?どうしてうさぎが産まれるのか?うさぎ??
わたしは、体調に変化がないこと、まったくわけはわからないけど落ち着いてはいることを男に伝えましたが、男はおろおろするばかりでした。

「先生のところに行く、うさぎをつれてお前もついて来い」と男がいうので、わたしはうさぎを抱いて表に出ました。この間にもうさぎは成長しているようで腕の中でハンドボールほどの大きさになっていました。
私たちの家の裏には老医師が住んでいるのですが、そこでわたしとうさぎを診てもらうつもりのようでした。

腕の中でうさぎはどんどん大きくなっていて、スパンクくらいになったころ、抱いているわたしの腕を蹴って庭に飛び出しました。
うさぎが逃げたことを告げると男は自分は先に行って事情を説明しておくから、うさぎを捕まえたらすぐに来るように、といいました。
わたしはかっぱ巻きを温めないといけないことを思い出したので家の中に戻りました。

温めたかっぱ巻きをつめた箱を提げて外にでると、男が泣きながら帰ってきました。
「どうして泣いているの?」
「先生がとてもいい話をしてくださったからだ。相当ご苦労されてきたようでね。やはり昔の男は強いよ。」
そういいながら男は涙を拭きました。
「それでうさぎの件は?」
「それは心配ないそうだ。ままあることだ、って先生がおっしゃっていた」
「そう」
わたしは、先生のところにいかなくてよくなったので、ほっとした。かっぱ巻きは温めたが落雁の用意ができていなかったのだ。
うさぎはまた少し大きくなって庭のどこかにいるらしかった。

ていう夢。
スポンサーサイト
<< NEW | TOP | OLD>>
Menu