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送る女
真っ白なメールが届いた。
登録していないアドレスからのもので、件名にも本文にもなにも書かれていなかったけれど、それが昔付き合っていた男からのものだということはわかった。キャリアを変えたようだけれどメールアドレスには見覚えがあった。
何も書いていないからといってメッセージがないわけではなくて、メールを送ってきたということがなにかしらのメッセージなんだろうと思うと面倒な気分になった。

なにか用があるのかとも考えたがなにもないから空メールになったんだろう。単純に宛先を間違えただけだったのかもしれなかったがどっちにしろどうでもよかった。
ただ、急に(今は何の関係もない)昔の知り合いのことを思い出さされる、というのが煩わしかった。絶対に思い出したくないひどい過去だからということでも(ひどい話ならたくさんあるが)(そういうのもだいぶ忘れてしまった)、思い出すと心が乱れるからということでもない。今のわたしには彼についてなにを思う時間も持ち合わせていないというだけだ。

メールを削除しながら思い出したことがある。
就職して間もないころなので10年以上前のことだ。交際していた相手に「別れたい」といわれた。
彼のことを好いていたけれど、「いやだ」といったところでどうにかなるわけでもなく、わたしはそれを了承するしかなかった。ふたりで行くはずだった演劇のチケットを彼に買い取らせて、それで別れた。長くも短くもない10ヶ月。

それで別れたんだけれど、わたしは彼をまだ好きだと思っていたから、やっぱりしばらくはぼんやりしたりため息をついたり鼻をすすったりしていた。
それでメールを打ったんよね。
「花火大会、いっしょに行こうよ!」って。

「花火大会、いっしょに行こうよ!□□ちゃんに誘われたんだけど○○ちゃんも行かない?行こうよー」って。

彼は○○ちゃんではない。
○○ちゃん宛てのメールを間違えたふりをして彼に送ったのだ。
まったく、何を思ってそんなことをしたのか。「間違えて送ってるよ」という返事がほしかったのか、「あんたなんていなくてもわたしは楽しくやってるから」とでも言いたかったのか。
とにかく、間違えたふりをして別れた男にメールを送りました。まあなんでもいいから反応が欲しかったのかな、そのときは。「来ないってわかってる、だけどもしかしたら」って思ったんかね、そんときは。きもいね。ほんときもい。
(あなたと行きたかったのにね)って言いたかったのか?まさか、そんな、きもいこと、まさか。

で、「送信しました」という表示を見たしゅんかん、「何をやってるの?!」「何をやってるのわたしは?ばかなの?しぬの?」って、なんていうか、我に返って?うわー!てなって今送った、送信済みのメールを削除しました。相手には届いてしまっているので意味はないんだけど、そんなはずかしいもん見たくない、死ぬる、つって。
そこでもう「きもいな!」って自分を取り戻したわたしは、そのときからぼんやりしたりため息をついたり鼻をすすったりのをやめました。彼から連絡はありませんでした。花火にも行ってません。だれとも行ってません。

ほんと失恋のぼんやりには気をつけないといけない。頭がおかしくなるよ。なんつうか、もう、さむい。

あと、日記の下書きを間違えて友達に送るのもいけない。頭がおかしいのかって思われるよ。なんつうか、もう、しにたい(インターネットのおともだちだったので一命を取りとめました)。
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