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気付かない女
喉が痛い。
唾を飲み込むときに喉の左のほうが痛んだ。
鏡をのぞいてみてもよくわからなかったが腫れているようなかんじがある。
左の鼻の奥にも違和感があった。米がひと粒ひっかかっているようなかんじだ。
きもちわるいなと思いながらその日はそのまま寝て、おさまっていることを期待したが次の日も症状は変わっていなかった。喉は痛いし、左の鼻の米粒は無くなっていたがひどく詰まる。
しかしそのほかにしんどいところはないので仕事には行く。昼間会社にいる間はすこし痛みがやわらいでいる気がした。
その日も痛みのひかないまま寝て次の日起きると痛みがすこし増していた。左も右も痛い。

「頭痛・発熱に」と書かれたパッケージを裏返すと「咽喉の痛みにも効果がある」と説明がされていたので、朝食のあとに鎮痛剤を飲んだ。朝食はいつもと同じ量を食べた。
薬を飲み込んだときにようやく自分が風邪をひいていることに気付いた。おかしいと思ってから3日もたっている。ヤツのアプローチがいつもと違うのとしばらく風邪をひいていなかったのとで気が付かなかった。喉の痛みと鼻水鼻づまりなんて風邪の症状ランキング1位とか2位とか3位とか4位とかやんね。
バカは風邪ひかないってむかしよくきいたけど、バカはひいても気付かないということなのでしょうか。この風邪も悪くならずにこのまま治りそうです。

眠る女
わたしがいま働いている部署は、部署はというかわたしひとり、すごいひまなんですよね。やることがない。
じゃあなんでわたしが雇われているのかというとわたしがいないとマネージャが困るからで、なぜならわたしは有能な部下であるからですけど、有能なのに仕事がありません。?。
そもそも週に5回も会社に行かないといけないほどの業務がないのです。わたしがいなくても社内の人員をやりくりしてどうにかなるのでは?とも思いますが組織のなにかしらでそういうことでもないのかもしれない、よくわかりません。しかし、わざわざ外部から派遣社員を雇い入れてパソコンの前で寝かせておくとか意味がわかりませんね。いえ、寝てろとはもちろん言われていませんが。
とにかくわたしはひまなので、ひますぎて毎日会社で居眠っています、もはやルーチンと言ってもいい。10時と14時と16時になったら寝る、そういうふうになっている。
もちろん(居眠りをするようになった)最初のころは「こんなことではいけない」と強く思っていましたが、今では「だってすることないのだから」「仕事をさせない上司が悪い、わたしは悪くない」と考えています。これは仕方がないことなのだと。ひまに負けると精神を病んでしまいます。だからわたしは眠るのだ。あんまりひますぎて、死ぬか眠るかのどちらかをしないと死ぬ。
プロの居眠り師はまったく周りに悟られることなく居眠ることができるといいます、しかしわたしはそこまでの技術も気概も持っていないただの地味な派遣社員であるので、椅子の上でぐらぐら揺れたり、机の上で深い深いおじぎをしていたり、ビクン!ガツン!と机を蹴ったり、ということをだいたい毎日やっています。だれもなにも言いません。このあいだなどはゆっくりと目を覚ましながら「クゥウ〜ン」とおかしな声を漏らしてしまいましたし、寝ている間に「新しいフォルダ」ができていたこともあります。みっつも。
自分で思っている以上に深く寝入っているときもあるようで、オフィースの人の動きにも気付けず、そっと目をあけると周りにだれもいなかったりします、いつからいないのか、どこにいったのか、どうして自分はここに勤めているのか、もうなにもわからない。席を立つときに隣のひとは多分「会議室にいきます」と声をかけていったのだと思いますがそれでもわたしは起きなかったし、あるいは「こいつめっちゃ寝とるやんけ」「ほんまにぐっすりや!」と思って黙っていたのかもしれません、後者のような気がしてなりません。起こせや。
そう、俺を起こせ。起こしてくれ。もう棒で殴って起こすくらいのことをしてもいいと思うのです。彼らはそれをやるべきなのです。ほんまやで。
今日は眠らないように、こうしてキーボードを叩いているのですが、まばたきの回数がだんだんと多くなってきました。わたしは今、子供をさらいに来る、あの魔王のことを考えています。お父さん、魔王が来るよ、お父さんこわいよ。坊やそれは風の音だよ。お父さんには魔王の声が聞こえないの?お父さんお父さん魔王が僕を連れて行くよ・・・!父親の腕の中で坊やは息絶えていました。かわいそうな坊や・・・。それではわたしもこのメモ帳を閉じるとしましょうね
読む女
こどものころは本が好きで学年が変わって新しい教科書をもらった日は、読みながら田舎道をてくてく歩いて家に帰り、国語の教科書などはその日のうちに読んでしまっていました。
学生のときはレンタルビデオ店でアルバイトをしていて、その店の1階の書店でよく買いものをしていました。
どんどん買うので読むのが追いつかず、「まあ30歳までに読めばいいや」と思って棚に並べていたんだけど(このときは、買うこと、手元に置くこと、が楽しかったのかもしれない)結局30歳を過ぎても読めないままの本がたくさんあります。いまさらこれを読むのか?という本も、実家に置いてきた本もいっぱいある。

それで話はここからなのですが、わたしが今「むかしこんな本を読んでいた」とか「こういう作家がすきだった」とかそういう話をすると男が「文学少女アピール乙」みたいなことをいうんよね。それがはらたつ。
だいたい「文学少女」ということばがわたしはきらいだし、今となっては少女の欠片もないし、わたしは本がすきだったけど特別たくさん読んでいたわけでもないし、「文学」とかよくわからないし、うまく説明できないけどとにかくイラッとする。

ほんでまたわたしが若い頃好んで読んでいたのがジャンルでいうと「純文学」というものになるらしいんだけど、その点についても男が「ハイハイ純文学、純文学ね」ってちょっとばかにした顔をするんよね、はらたつわー。
まあ純文学乙って言いたくなる気持ちもなんとなくわかるんだけど(村上春樹いじり的なやつか?)、でも格好つけて純文学読んでるって言ってたわけじゃないし(むしろわざわざ言うのはずかしいだろ)(でも「宮部みゆき?ああ、あの売れてる作家ね、そっちは読んでないけど」みたいな顔してたときあるかもしれん)(でも若者っつうのはだいたいそういうもんだから…)、ふつうに好きだっただけなのになんでちょっとバカされるのか(しかも今になって)、と思って腹が立つとはいかないけどいらっとはしますね。

わたしはべつに彼がむかし趣味でポエムを書いていたことも、本棚に銀色夏生と三代目魚武濱田成夫の本が並んでいることも、アルバムの写真にいちいち気取ったコメントをつけていたことも、日記帳に「理想の男女交際像(イラスト付き)」について書いていたことも、ばかになんてしたことないのにね。
別れる女
「別れることにした」
乾杯のあとの最初の言葉がそれだった。
久しぶりに連絡があったと思ったらこういうことか、と思った。
「ほんとうに?」
「別れることにしたっていうか別れることになった、というかんじ」
彼女は結婚して二年目だが、彼との交際は長く、結婚するまでに八年付き合ったといっていた。
「なにがあったの?あなたが別れたいって言ったの?」
「言い出したのは彼のほう。なにがあったかって?なにもないわ。離婚しなきゃいけないっていうほどの理由は思いつかない。不満があるなら教えて、って言ってみたけど、一言では言えない、だって。一言では言えないほどたくさんあるわけじゃなくて言葉ではうまくいえない、って。そんなぼんやりしたことを言われたって納得できるわけないのにね」
わたしはドレッシングのかかりすぎたトマトを飲み込みながらうなずく。
「毎日いっしょに食事をして週末にはふたりででかけてたの。大きなけんかだってなかった」
「うん」
「浮気はされてない、そういうことがあれば気付くと思うから。だけど好きなひとができたのかもしれない。それでわたしと別れてそのひとと付き合うつもりなのかもしれない。そうすることが決まっているのかもしれない」
そうすることが決まっているなら浮気をされていたということでは、と思うが口には出さない。
「本当はそんなことないって知ってる、わかりやすい理由が欲しくて言ってみただけ」
そうだろうとわたしも思った。
ほとんどわたしひとりでサラダの皿を空けたところで次の料理が運ばれてくる。海老と空芯菜の炒め物、黄色い餡のかかった蒸し魚。いただきましょうか、と顔で訊いてみたが彼女には届かず、わたしだけが箸をつけた。
「修復はできないの?」
「わたしたちの関係が修復の必要なものになっているということにも気付いていなかったのよ、わたしは。これ以上続けられないって一方的に告げられて、考え直してほしいって泣きついたって、もう戻れないところまで来ているんだ、って言われるんだから、どうすればいいのかわからなくなるわ」
「そうだね」
「これ以上いっしょにいられないって思うくらい我慢させてたんだと思うとすごく傷つく、わたしが。その上なにを我慢させてたかもわからないんだから。どうして言ってくれなかったの、って思うよね。思わない?」
「思う」
そこで彼女は黙ってしまって、わたしは皿の上にひとつだけ残っていた春巻きを片付ける。なぜだかわからないけれど、光の届かない海を泳ぐ、鱗のない深海魚のことを思い浮かべた。
「残念だね」
ほんとうに残念なことなのかわたしにはよくわからなかったけれど(彼女がかなしんでいることはよくわかったけど)、何を言えばいいのか思いつかなかった。
「こんなことになるなら十年も付き合わないでさっさと別れておけばよかった。こんなこと言っても仕方がないけど」
こういうときに、言っても仕方のないことを言いたくなるきもちはよくわかるとうなずきながらメニューを差し出す。彼女は二杯目の酒を注文し、わたしは彼女の取り皿の上で冷えていく魚の身を気にしている。
食えない女
春、それは出会いと別れの季節。出会いと別れの季節やん。
すなわち歓送迎会の季節やん。行きたくなくても断れない、社会人のかなしみ。

いや、いいんですよ、送別会は。お世話になりましただしお疲れ様でしただし。参加するのいやじゃないです。
でも、お店の料理がおいしくなかったんよね。

まあね、会場が駅前の居酒屋チェーンってきいたときから期待はしてない。あー…、て思ったけど、30人飲み放題だもの、しょうがないよね、って思ったよ。
でもまあまあの費用を徴収されたし(わたしは女性なので安くしてもらったけど)、この金額だったらそこそこ食べられるのかな、って思ってたのに見事に裏切ってくれたよね。いや、ほんとはやっぱり予想通り、と思ってるけど。

お通し、鍋もの、芋のサラダ、揚げた芋、まずい焼肉、ぬるい焼き鳥、最後はなんか、鍋の汁が残ってるだろ?それでこの麺を茹でてすすってれば?みたいな。
わかってる、わかってる、期待なんかしてない、でも、ほんまに、おいしくない、ねん。食べるものが、ない、ねん。大皿に盛られた冷めかけのフライドポテトもドレッシングをかけすぎた生野菜も、そんながさつな料理は食べたくないねん。
しょうもない食べ物でおなかをふくらませるのはもういややねん。ほんまにいややねん。ほんとだよ?

わたしはお酒を飲めないからお料理がまずいとウーロン茶をすするしかないんよね。ウーロン茶おかわりー、ウーロン茶くださーい。お前らはアルコールでホッカホカなってるか知らんけどウーロン茶4杯飲んだらめっちゃ寒いねんからな。
アルコール放り込んでわーわー騒いでるお前らとは、心も体もものすごい温度差なんやで?ほんとだよ?

ほんで「お酒だめなの?飲みそうな顔なのに。飲むとどうなるの?」っていう、おとなになってから何十回目だよ、ていうやりとり。「へぇー、お酒が飲めないひとのきもち、ぜんぜんわかんないわー」
うん、そうね、じゃあ教えてあげるね。酒が飲めないわたしたちのきもちは「料理がまずいと凍え死ぬ…」それだけです。
そこだけですんでよろしくお願いします。
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